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上海便り
1999.12.17 第壱百壱便、脱脂綿気質
次のミレニアムまであと半月足らずとなりました。私が上海に初めて「上陸」したのは11年前の1988年です。それ以来大学の夏休み、サラリーマンの有給休暇、そして現在と立場こそ異なりますがこの街に強烈に惹きつけられ虜になってしまったのです。これ程まで埃っぽく騒がしく気の休まらない街も少ないでしょうが、日本に帰って2週間もすると不思議とこの魔都に舞い戻りたくなるのです。

先週号で12年ぶりのソウルに触れました。韓国人の友人もおり個人的に大好きなのですが彼らは国の歴史や文化伝統だけでなく戦後急成長した自国企業とその製品にまで非常にこだわりが強いのです。アパートの外壁にまで財閥の名が誇らしげに書かれ、先進国のはずなのに走っている乗用車は全て過去3つの財閥が作った国産車でその中でも1社は既に倒産、残る2社のうち1社も財務的に問題を抱え最後に無傷で残るのはなんと1社だけです。

一方の上海は一見すると全て外国車です。しかしブランドはVWやGMでもすぐ横の漢字エンブレムで分かるように、殆ど地元上海で組み立てているのですからもう名を取るか実を取るかの世界です。また写真の車は別格ですが最近はレクサスやBMWなど本物の輸入車も増え、加えて広州のHONDAアコードが急増中です。

上海はまるで脱脂綿の様に世界中から資本、技術、頭脳やストリートファッションまで抵抗無く素早く吸収してしまうのです。なぜならそれらは確実に便利で毎日の生活を豊かにしてくれるからです。キャッチアップ型だからと片付けるのは簡単です。しかし世界には自由経済を標榜しながら政治・行政と産業界が癒着し自国産業の保護育成を名目に海外企業の進出や製品そのものに対して拒否反応を示す国が多いのです。それらは結果としてぬるま湯に浸かった自国産業を世界標準に乗り遅らせ、競争力を削ぎ、ひいては雇用の場も失ってしまうのです。

IT革命により21世紀は不合理な差別や格差は急速に意味を持たなくなるでしょう。スケルトン社会と言っても良いでしょうか。上海人の脱脂綿みたいな気質はこうした透明な標準化社会にマッチし、これに反論を唱えるエスタブリッシュサイドが殆どいない事もこの街を一層エネルギッシュにしています。

「上海が今後どうなっても建ててしまった超高層ビルは日本に持ち帰れない」日本から来たお客さんを浦東の陸家嘴に案内した際の感想でした。

(丸加物産株式会社 代表取締役 藤川 洋)

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