はっきりとした統計数字は無いが、数ヶ月前から上海の店頭で売られている電気製品などの耐久消費財をはじめとした消費者物価が再び上昇に転じたのではないかと思われる節がある。98年から今年前半にかけ中国都市部では初めて経験するデフレ経済に見舞われた。背景には失業率の上昇、株式や不動産価格の大幅な下落など資産デフレもありうるが、何と言っても瞬間的な供給過剰が主たる原因と思える。
例えば中国の娯楽の中心であるVCDプレーヤーは90年代前半までは日本と韓国のブランド、及びPhilips社の独壇場で価格も3,000元程度で推移していた。やがて国営工場が大量生産に乗り出し、その後は郷鎮企業や無数の私営企業が参入し、現在では500元台から店頭に並んでいる。これほど極端ではないがエアコンやテレビ、冷蔵庫や電子レンジ等もほぼ同様の動向を示した。また国内線の航空券も地方航空会社の便数増加で供給過剰気味、主要幹線では定価の半額にまでディスカウントされていた。
ところが最近は電気製品の叩き売りも姿を潜め、例えば人気商品のソニー平面テレビ(29インチ、上海生産)などは8,000元程度で売られており日本の実売価格より3割以上も高い。また航空券も減便と民航局の通達で割引幅を2割以内に制限され、かつてのような半額チケットを利用できなくなった。更に株価の大幅上昇やエネルギー価格の上昇で、建国50年を迎えようとする新中国で初めて経験したデフレ経済は僅か1年余りで底を打ったと思われる。
2030年のピークには人口16億に達すると言う超大国の1人1人は、間違いなく現在の上海のような先進国水準の消費生活を目指すであろう。やはりこの国にデフレは似つかわしくない。
(丸加物産株式会社 代表取締役 藤川 洋)