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上海便り
1999.7.23 第八十一便、イノベーションと中国
上海とは関係ないがアポロ11号で人類が月面に降り立ってちょうど30年になるそうだ。現在のシャトルは確かにすごい技術の結晶なのだろうが、素人目には高空をグルグル廻っているだけにしか見えない。しかも有人飛行は未だ実験段階を脱せずにいる。コンピュータをやっていると30年といえば太古の昔に思える。しかし30年以上前に開発された超音速旅客機は現在でも環境面や航続距離の問題で太平洋線に就航できず、営業中の高速鉄道も動力集中か分散かの違いだけで35年前に1つの完成を見たシステムと本質的に何ら変わらない。

その後、現在までに人が月に降り立つ様な夢のあるテクノロジーの成果が見られなかった最大の理由は冷戦終焉と共に「儲からないことはやれない」と云う経済性の制約であろう。けれどももう一つ見逃せないのは長年同じ手法で技術を研ぎ澄ませていった結果として既に煮詰まってしまったからではなかろうか。こうした現状を打破する1つの回答がここ数年のIPテクノロジーの急展開である。ベルやマルコーニ以来、通信事業とは同一種類の信号を1つ1つワイヤーや周波数を割り当て無線で繋いでゆく気の遠くなるような事業だった。当然莫大な予算が必要で多くの国は国家事業としてこれを執り行った。ところがここ数年で事情が一変、声も映像も文章もパケットでミックスし、距離に関係なく複数箇所に同時に送れるようになるともはやこれまでの通信業の延長ではない。現在進行中の世界的な通信業界再編はこの結果起こっていると言えよう。

今後、革新的な技術開発のエポックは中国で起こるのではないかと考えている。例えば欧米がサジを投げ日本も今後50年掛かると言っている核融合炉はもしかすると中国で完成するかもしれない。今後、エネルギー問題で最も苦況に立たされるのは中国であり、この切迫度は冷戦下にアポロ計画を推し進めた米国に匹敵するでしょう。また遺伝子レベルの生物工学によりもたらされる食糧増産や、大量高速輸送システムでも中国ほど要求の大きい場所はないでしょう。グローバル化した現在では有効需要がある場所には黙っていても世界中から様々な有形無形の資源が集まって来ます。ことコンシューマー分野に至っては先に中国市場で成功し、その後世界商品となる物が出てくるのもそう先の事ではないでしょう。

(丸加物産株式会社 代表取締役 藤川 洋)

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